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東京地方裁判所 昭和38年(ワ)6159号 判決

原告 横田七五郎

被告 沼田友吉

右訴訟代理人弁護士 松浦茂明

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

≪省略≫

理由

原告主張のとおり五回にわたつて被告が原告から合計金一三〇万円の貸与を受けたものとして原告主張の契約が成立し、被告が(五)の債務五〇万円のうち金二五万円を弁済したことは当事者間に争いがない。

よつて進んで被告の主張について判断する。

≪証拠省略≫並びに弁論の全趣旨を合わせれば、原被告間の前記(一)から(四)までの契約は原告が胴元をする等をして参加した賭博において被告が原告から賭博に供するために借り受けた金員の返還を目的として、締結された準消費貸借であり、(五)の契約は昭和三七年一一月頃被告が前記(一)ないし(四)の債務とは別に原告より賭博のために金員を借り受けたことがありこれが支払のため金額三八万円、満期昭和三七年一一月三〇日の約束手形を振出していたところ、原告が約に反し右手形を被告の取引銀行へ支払のため呈示したため、そのころ被告において原告から右支払資金として金三八万円を借り受け、かつさきに賭博のため借り受けた金員の利息一二万円を払うこととしその合計金五〇万円を消費貸借の目的として締結したものであることが認められる。右認定に反する証人小山田有年の証言、証人岡部良三の証言の一部分並びに原告本人尋問の結果は措信できず、他に右認定をくつがえすに足る証拠はない。

すると原被告間の本件消費貸借契約(準消費貸借契約)はいずれも公序良俗に反し無効であるから右契約の有効なることを前提とする原告の本訴請求は理由がない(右消費貸借が無効であつても、右は不法原因給付であるから、右無効を理由とする返還請求も許されないことは明らかである。)。

よつて原告の本訴請求を失当として棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 浅沼武)

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